2014年2月26日水曜日

一泊二日弾丸ソウルレポート! 其の三


【 このブログを読んでくださるかたへ 】

※このブログを読んで下さった方から、イム・ドンヒョクというピアニストについて悪く書いている、という批判をいただきました。しかし、私はそのような意図で以下の文章を書いたわけでは決してありません。
ピアノを楽しむ人間として、感想を綴っただけです。ピアニストへの批判や注文ではありません。
今まで聴いてきたリサイタルと比較して、音の方向性が変わったように思えたこと(そしてそれは座った場所のせいかもしれないこと)、シューベルトのソナタについてはプログラムの中で特に力を入れていたように感じたこと、要点はその二つです。
個人的な感想文ですので、リサイタルについての感想という以外の意味は持ちません。
彼の演奏に評価をつける意図もまったくありませんし、彼に個人的な感想を伝えるためにこのブログを書いたわけではありません。自分がピアノについて詳しいのだ、私の感想は正しいのだ、という自己顕示でもありません。ご了承ください。
コメントを残される場合、こちらの判断で削除させていただく場合もございます。よろしくお願いいたします。



     ★



ようやくドンヒョクのリサイタルまで辿り着きました~(苦笑)
小さな旅の備忘録も兼ねているので、お許しくださいませ。


本編に入る前に…

自分の記録も兼ねて、今までに聴いたリサイタルの曲目を思い出してみました。
2009年5月3日 ラ・フォル・ジュルネ(東京国際フォーラム)

1曲目:ケンプ)フルートとチェンバロのためのソナタ
       変ホ長調BWV1031
2曲目:ブゾーニ)コラール前奏曲「目覚めよと呼ぶ声あり」BWV645
3曲目:ブゾーニ)コラール前奏曲「主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ」BWV639
4曲目:ブゾーニ)無伴奏ヴァイオリンパルティータ
             第2番ニ短調BWV1004よりシャコンヌ 


     

2010年4月23日 第12回別府アルゲリッチ音楽祭(大分市 iichiko 音の泉ホール)

ラヴェル)亡き王女のためのパヴァーヌ
夜のガスパール
第1曲:オンディーヌ(水の精)
第2曲:絞首台
第3曲:スカルボ

ショパン)マズルカ イ短調 作品17-4

マズルカ ハ長調 作品56-2

マズルカ 嬰ハ短調 作品63-3

幻想ポロネーズ(ポロネーズ第7番) 変イ長調 作品61

プロコフィエフ)ピアノソナタ第7番 変ロ長調 作品83
第一楽章:アレグロ・インクィーエート
第二楽章:アンダンテ・カロローザ
第三楽章:プレピチタート

アンコール
ショパン)ノクターン第2番変ホ長調op.9-2
シューベルト)即興曲集D.899(作品90)第2番 変ホ長調
ラヴェル)亡き王女のためのパヴァーヌ


     ★

2010年5月4日 ラ・フォル・ジュルネ(東京国際フォーラム)

ショパン:マズルカ イ短調 op. 17-4
ショパン:マズルカ ハ長調 op. 56-2
ショパン:マズルカ 嬰ハ短調 op. 63-3
ショパン:ポロネーズ 変イ長調 op. 61「幻想ポロネーズ」
ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 op. 58


     ★
 
2010年8月24日 サントリーホール

ラフマニノフ) ピアノ協奏曲第2番ハ短調

     ★

2012年5月7日 紀尾井ホール

チャイコフスキー「四季」全曲
ショパン「マズルカ」イ短調op.17-4 ハ長調op.56-2 嬰ハ短調op.63-3
ショパンの幻ポロ
ラフマニノフ「ピアノソナタ第2番変ロ短調」


アンコール
ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」
ラフマニノフ「プレリュードop.23-5ト短調」
シューマン「トロイメライ」 


と、なっておりました。
そうか~、たったの5回しかナマで聴いてないんだな~

でもその5回は、私の人生にとってかけがえのない時間です。
ピアノほど、…ドンヒョクのピアノほど、ナマが大事だと思うものはありません。
同じ時代に生きて、ナマでこの音を聴けること、神様に感謝しています。

そして今回

2014年2月18日 ソウル・アーツ・センター

ドビュッシー) ベルガマスク組曲より「月の光」
バッハ) トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV564
ベートーヴェン) ピアノソナタ第14番嬰ハ短調「月光(幻想曲風ソナタ)」
シューベルト) ピアノソナタ第20番 イ長調 D.959

アンコール
シューベルト) 楽興の時 第3番 ヘ短調 D.780-3


今回、どうやら座った場所がよくなかったようで(一番前だったのに…)、ドンヒョクのお家芸・キラキラ音が思ったように楽しめませんでした(>_<)

そしてもうひとつ、私がキラキラ音と同じくらい楽しみにしていた「突き刺さり音」あるいは「パンキッシュな音」とも言うのですけど(どちらも勝手に命名)、それも感じられませんでした。

ドンヒョクの年齢を考えれば、もういちいちトンがってる場合じゃないのかも。
なんか、そんな音だったなー。

というのも、2年ぶりにナマドンヒョクを拝んだのですが、舞台に登場してきて一番に思ったのが

あれ、ドンヒョク、大人になっちゃった?

ということでした。
なんかもう、あの、少年のような面影があまり、感じられなくて。
でも初めてドンヒョクを知ったのが7年くらい前ですから、当たり前ですよね。



「月の光」は、つぶやくような音で始まって、流れるように進んでいきます。
月の光を見上げるというよりも、コツコツと石畳を歩きながら、背中で月の光を感じ取るような、そんな音。
もっとキラキラ音いっぱいに拡がっていくのかと思っていたので、ちょっと、意外でした。

バッハはやっぱりCDと同じように、他の演奏者とは違う、可憐なバッハ。
華やかなバッハというのでしょうか、でも、軽くないんですよ。

ベートーヴェンの「月光」は、以前に聴いた日本人若手ピアニストの演奏があまりにも強烈な印象だったので、そちらと比べてしまうと(というかお互いにあまりにもスタイルが違うので比べるのはおかしいんですが)、ちょっとアッサリしてるなーと思っていたのですが

休憩をはさんでから始まったシューベルトを聴いたら、ガツーンときました。

この夜、ドンヒョクは、シューベルトに全力を投入したんじゃないかしら? という音に感じられました。
彼はインタビューなどで好きな作曲家にシューベルトをあげていたのを読んだので、そう感じたのかもしれません。
このピアノソナタ第20番、シューベルト晩年の作。19、20、21番と続けて有名のようです。
晩年と言ったって31歳で死んじゃうんですが、死ぬ2ヶ月にこんなすごい曲作っちゃうって、ひえ~ですよね。
で、まあ、私はドンヒョクの演奏で初めて聴いたのですが、予習してから来ればよかったと後悔しました。ぱっと聴いてぱっとわかる曲じゃない(汗)
なので、曲全体を掴むのはサッサと諦め、ドンヒョクの音だけを掴み取ることに徹しました。
キラキラよりも、突き刺すよりも、次の場所…違うところを目指している音に聴こえました。

帰国してからアファナシエフさんの第20番をituneで購入して聴いているのですが、彼の場合にはわかりやすくしてあげましょう~というような、アメを食べた後、包み紙のシワを指で丁寧にのばすような、そんな音に聴こえます。
ドンヒョクはそうじゃなかった、やっぱりドンヒョクは横に拡がらない、上に拡がるのかなぁ。
でも2010年8月のサントリーホールみたいに、真上に渦を巻きながら垂直に上へと拡がるのとはちょっと違ったなぁ。もっと大きな空間が見えるような気がしました。

村上春樹がシューベルトについて

シューベルトというのは、僕に言わせれば、ものごとのありかたに挑んで敗れるための音楽なんだ。それがロマンティシズムの本質であり、シューベルトの音楽はそういう意味においてロマンティシズムの精華なんだ」

と『海辺のカフカ』で書いてるそうなんですが(こちらの方のブログで拝見しました)、

ほほう~! ほほう~なるほどなぁ~! と激しく同意。

ドンヒョクの音はそんなシューベルトにピッタリだと思います。

そして、アンコールは、とっても素敵でした。いい音だったわ~(*^_^*)
オリンピックのエキシビションみたいな、肩の力が抜けたドンヒョクのアンコール演奏、私はかなり好きです。
オシャレな楽興の時だった(笑)



終演後、サイン会は文字通り長蛇の列…
ほんとうにドンヒョクはアイドルなんですね!
しかも、女性だけじゃなく男性もサイン会に並ぶならぶ~www
私は、かなり迷いましたが、サインはいらないけど、カードを渡すことにしました。
どうせ何も話せないし、伝えられないから、カードに英語とハングルでメッセージを書けば、ファンの言葉として見てもらえるかなー、伝わるかなーと思ったので。


サインを頂くつもりはなかったのですが、もう流れ作業のように係のかたが「ハイハイパンフ開いて!」と言って下さるし、ドンヒョクもペンを持って待っていてくれたので、大慌てで私が開いたパンフのページが表2の化粧品の広告ページ…ドンヒョク苦笑…チョー恥ずかしかった!
でもちゃんと、ドンヒョクのポートレイトの横に、サインを頂けました。
ほんの5~10秒程度でしたが、ナマドンヒョクをすぐそばで拝むことができました。
リサイタル終了後の、疲れているけどホッとしたような、あの可愛い笑顔でした(*^_^*)


リサイタルの開演が20:00、終了が22:00、サイン会が終わってカフェでお茶していたら、あっという間に23:30!

ソウルのタクシーは遠回りしてぼったくる、と大兄からもママ友Sちゃんからも聞かされていたので、夜中の街は怖いけど、敢えての地下鉄帰りを選択。

来た時以上にテンパって、間違った改札を通ってしまい切符を無駄にしたり、切符自販機の前で「お札が入らん!」とヒーヒー言ったり、もうハタから見てかなりアヤシイ観光客でしたが、なんとか無事ホテルに辿り着けました!
夜中のソウル、けっこう安全かも(って油断しちゃいけないけど)。

本当は素敵なお店でゆっくりお酒でも飲みたかったけど、すでに12時回ってるし、独りじゃさすがに怖いので、ホテルのそばのセブンイレブンでビールとオツマミを買いました。
お店のオジサンが、日本人とわかるとやたらと嬉しそうにカタコトの日本語で話しかけてくれて、その笑顔とカタコト日本語でなんだか心があったかくなりました。ハングル好きか? オレは日本語好きだよ! みたいなことを言っていた気がする…たぶんw
韓国の人は日本語嫌いかなぁって思ってビクビクしていたけど、カフェでも、お店の人にカタコト英語が通じず困っていたら、順番待ちしていた若い女の子が日本語で助けてくれたりと、とても優しくて親切でした。 
国と国とはなかなかスムーズにいかないかもしれないけれど、大事なものはもっと小さなところにあるように思えてしかたありませんでした。
歴史を考えれば簡単に言っちゃいけないのかもしれない。でも、私は今回の旅行で出会った韓国のみなさんの笑顔を忘れないで、大事にしていきたいと思います。ありがとう!




トッポギスナック、ちょーうまかった!(笑)


2 件のコメント:

  1. マダーム!!リサイタルに行っていたんだね!すごいね!マダームの行動力には本当に頭が下がります!!
    実はね・・私、月の光大好きなの。今も時々弾くんだけどね。
    月の光だけは、ものすごく感情が入るの。本当に弾いている姿見せたくない位・・
    素敵な曲よね!
    マダーム、無事に帰国されてよかった~!!
    今度お会いしたら沢山聞かせてね!

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    1. ママ~!
      コメントありがとう!
      ママの弾く月の光、聴いてみたいな。あの曲は本当にいい曲だね。
      そして弾く人の持つ月へのイメージや想いで、音が変わると思うんだ。
      ピアノって、面白いよね!
      また会いたいです。

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